最高裁判所第三小法廷 昭和38年(オ)516号 判決 1966年11月22日
上告人 金丸豊訴訟承継人
金丸チヨミ
ほか一名
右両名訴訟代理人
野島豊志
被上告人
九州製氷株式会社
右代表者
藤林貞治
右訴訟代理人
村田利雄
右訴訟復代理人
浜田正義
主文
原判決を破棄する。
本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
理由
上告代理人池田純亮名義の上告理由について。
時効による不動産所有権取得の有無を考察するにあたつては、単に当事者間のみならず第三者に対する関係も同時に考慮しなければならないのであつて、この関係においては、結局当該不動産についていかなる時期に何人によつて登記がなされたかが問題となるのである。そして、時効が完成しても、その登記がなければ、その後に登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗することができないのに反し、第三者のなした登記後に時効が完成した場合においては、その第三者に対しては、登記を経由しなくても時効取得をもつてこれに対抗することができるものと解すべきことは、当裁判所の判例とするところであつて(昭和三二年(オ)三四四号同三五年七月二七日第一小法廷判決、集一四巻一〇号一八七一頁以下、同三四年(オ)七七九号同三六年七月二〇日第一小法廷判決、集一五巻七号一九〇三頁以下)、これを変更すべき必要を認めない。
しかるところ、原審は、右と異なる見解のもとに、上告人の時効取得に関する主張を失当として排斥したものであつて違法であり、原判決はこの点において破棄を免れない。そして、本訴請求の当否を判断するためには、上告人の前記時効取得に関する主張についてなお審理をする必要があるから、この点について審理を尽させるため、本件を原審に差し戻すのを相当と認める。
よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(五鬼上堅磐 柏原語六 田中二郎 下村三郎)